小説「マイ・ラスト・ソング」(42) ~我が心の小樽!

~ " My Last Song"(42) has been released to my supportive readers ! ~
 
 … 短い暑い夏が去り、もう涼風に揺れる「小樽運河」の黄昏 …   
                      
              衰退の美学か・・・「小樽」の…。
             Jazzが流れるレトロな小樽運河
             初秋の黄昏、彷徨する熟年の二人
             人生は「一期一会」、そして「会者定離」
             心ではいつもそんな葛藤が…。




    小説マイ・ラスト・ソング」(42)                   
         ~ 永遠の青春、小樽運河 ~   
 

 大人の恋は 「非日常」
 大人の恋は 二人だけの秘めごと
 大人の恋は 時にはメルヘン
 大人の恋は 時には狂気

  恋は短い 夢のようなものだから
  たとえ、哀しくても 切なくても
  そこに二人だけの人生をみる
  
  ひととき、ひとときの逢瀬を重ねて
  恋は 心を焦がし 身を燃やす
  いつか来る 別れまで…
  
  でも「恋」は後悔しない


画像


              ~ This illustration given by Waka in Otaru


第四章 小樽で暮らすということ…(9)

           4.
 
 知也の書斎から、近くの公園の桜が見える。
 空が遠くに霞んで消えて行くような…。
 茫洋と小樽に続く空を仰ぐ。
 初めて美知に逢ってから
 もう夢のような半年が過ぎる。
 
 小樽の北運河の開発計画は、予算がつかないといってペンディングになったままだが…。
 小樽市の職員も、所詮お役人である。
 小樽が繁栄するための努力より、自分に有利か不利か、
責任があるかどうかで判断する癖がついている。
 十年先の小樽より、今の自分の給料の方が大事である。
 それでも、知也の家族や社内の友人には、プロジェクトは継続中であることになっていた。
 
 美知と、ハリウッド・フィルムの出逢いをしてからも、早いものでもう六ヶ月が過ぎる。
 と言うことは、美知との「非日常」のために、知也は、自費でもう六回以上小樽へ行き、
運河の縁で、ホテルで、そしてベッドで、お互いの全てを愛し合ってきたことになる。
 逢うたびに新鮮で、自分なりに磨いている美知を、知也は眩しく思うこともある。
「人間は恋している時が一番美しい。
輝いて見える」。
 そんな輝いている美知がいつも心の中に存在する自分を、知也は幸せだと思う。
 新しいアイデアの源泉であるとも思う。
「恋に年齢はない」
と言っても、人生の黄昏近くに出逢った美知は、
知也にとって最後のバーン・アウト(燃え尽きる)する恋になるはずだった。
 小樽で逢っている時は、ヒート・ウェーブ(熱波)の中で、お互いを貪(むさぼ)りあう。
 お互いに、「をんな」と「おとこ」であることを充分に確かめ合う。
 そして、残された時間は、美知の社会や政治の質問だったり、時には、英検の準一級を目指すという美知の会話の相手だったりする。
 小樽にいる時間は、一泊二日で精々二十時間位だけど、それを眼一杯に、
美知は、何かと課題を見つけて知也を放さない。

 お互いが全てを求め合う「非日常」の歳月が過ぎるある日。
 美知のメールには、苦渋と困惑が見え隠れし始めた。
「ダディ。
ミチはね、このところちょっと苦しいの。
だって、ダディと一緒の非日常は精々月に二日。
でも、毎日のメールやケータイも『非日常』でしょ。
ねえ、ダディ。
ダディから厳しい日常のリフレッシュ、安らぎのために非日常があるって聞いて、
素晴らしいと思ってとても憧れました。
ダディとの出逢いも、非日常って素晴らしいって思わせました。
でも、今のミチには日常がイコール非日常みたいなの…。
ダディのことしかない。ダディとのことで日常が埋まってしまう。
非日常=“恋”って、そんなものでしょうけど、ミチの非日常は他の人の日常みたい。
日常を生き抜くためのスパイスの非日常が日常を埋めて尽くしています。
ゴメンネ、ダディ。
いつも非日常にいて無我夢中だったけど、今のミチには両親もいるし、美加も居ます。
それに本当は日常であるはずの仕事もあります。
なのに、いつも心はダディで一杯。
なにをしていてもダディ! 
ちょっと非日常に窒息しそうになっています。
それに、ダディに相応しいようにと、いつも背伸びして疲れています。
一度、ダディから離れて普通の日常に戻って考えてみたい。
ゴメンネ、ダディ」

そんなメールが届いたのが、陽春近い三月の二十日頃だった。

知也は、すぐにメールを返した。
「マイ・ビラブド・ミチ。
恋が非日常であるならば、それがお互いの心を占拠するのは仕方がない。
でも、ミチにはまだ将来がある。美容師としても、輝かしい『をんな』としても…。
ダディが年甲斐もなくそんなミチの将来を邪魔する理由もないし、
ミチが少し疲れているようだから、
ダディがちょっと引いたほうが良いのかもしれないね。
でも、ミチ。今のダディはミチの前進を止めているつもりはない。
ゆっくり考えるのもいいだろうが…。
何があったかは分からないが、焦らずに!
非日常は日常のためのワンダーランドだよ。
それが心を痛めるようではね。 ダディ」
 
 小樽の狭い世間とは言いながらも、その中で、美知は暮らしていかねばならない。
 美知は、知也のいない眼の前の現実、他のその辺りの人々のような平凡な(退屈な)日常から乖離した自分を見つめ直していた。

ダディは確かに「非日常」。
この辺の人たちと考えも違うし生活も違う。仕事柄、非日常を自分でコントロールしている。
年齢相応に女性にも優しい。
でも、私は、もう一度結婚という現実を目の前に求めはしないけど、両親や美加との生活、
美容師という仕事の日常のウェイトは高い。そして、小樽を離れることはない…?
ダディは近くて遠い人。
生活感で付き合える人ではない…

 
 知也とは付き合っていたい。
 夢のような時が美知を放さない。
 でも、知也との毎日のメールやケータイのやり取りの言葉に日常はない。
考えると心が千切れるほど苦しいけど、私は小樽、この坂の町で、
生きていく女である日常をもう一度考え直さねば…。

ダディ、ゴメンなさい。
しばらく時間を下さい。
この次の四月のお約束は先に延ばしていただけませんか?
ミチはダディがダイスキです。
だから、困るのです…。苦しいのです。
毎日、ダディのことが心身共に一杯、息苦しいくらいなのです。
ミチの我侭でダディに近づきながら、ゴメンなさい…。
きっと、自分なりに心の整理をして本当にダディとのことは、
日常のためのご褒美の『非日常』にしたいから…。
ダディ、お願いです。
しばらく、そっとしておいて下さい。
 ミチ

 美知は、遠い東京の空に向かって心の叫びを雲に乗せたかった。
 この果てしない空の下のどこかで、知也が美知のことを思っていると考えると辛かった。
 でも、知也は、日常の仕事がロマンを追っているような非日常的な部分もある。
 美知は、そんな少年のように夢を追い、朝から晩まで美知のことを思ってくれる知也に報いるには、心の余裕と、日常で割ける時間が到底及ばなくなってきたみたいに思えた。
 恋しいだけに、窒息するような心の重さを垣間見た。
 もう少し、大人に振舞えばなどと思ってみても、メールでも、電話でも、
二人の熱い思いは留まるところを知らない。
 知也のことを考えだすと、日常がすべて非日常に埋め尽くされる。
 日常を、より楽しく生甲斐のあるものにする。
 そのためのリフレッシュと癒しが「非日常」であるはずだった。
 しかし、知也の優しすぎる美知への思いやりは、
美知自身が無我夢中だった時期を過ぎると、
心に重く圧し掛かり、毎日、知也に対応する時間のなさ、
いつも心を埋め尽くす知也のその思いやりが息苦しくなってきていた。
そう思い始めると、「非日常」の二人の関係は正常な男女関係ではないとまで、
思い戻ることまであった。

「ディア、ミチ。
奔流の過ぎた後の虚しさみたいなものが、荒廃とミチを襲っているのかもしれない。
毎日のメールや電話が鬱陶しいならしばらくやめよう。来月は小樽にも行かない。
そうだよね、ミチが日常を豊かに暮らすための非日常に、
ダディがミチを引きずり込んで溺れさせてしまったのかなあー。
ダディの心は変わりません。
ミチの心の煩悶が落ち着くまで、メールも電話も止めにします。
ダディからしばらく解放されて、日常の味気ない日々に疲れ、
リフレッシュにミチが戻る日を待っています。
~ミチのため、ダディも我慢です」

 美知は、知也の哀しげな顔を思い出しながらも、
すこし走りすぎた「非日常」のシンデレラから、
今一度ごく普通の「高樹美知」に戻りたかった。
 やはり、知也との関係は世間体では許されることではないのだ…。
 そこに、男女の切ないけど純粋な幸せがあるのだろうが…。  
 夫婦という関係でお互いに「愛」を老人まで持ち越せないことが、
素晴らしい出逢いであり、「恋」というすべてから逃避した二人の僅かな時間なのだが…。
 美知は、知也に割いた一日の時間の大きさと心の苦しさから、ひと時解放されたい。
 いや、恋心からの打算的なひと時の逃亡であった。
 でも、「非日常」という知也との時間を
日常への逃避に持つことを止める決心までにはいかなかった。

  ~ To be continued (9月28日 Version43に続く ~

 「逢いたくて 小樽 ♪」
 ありがとうございます。
 日に日にアクセスが増えています。

画像

 
 何かと、現実的なアイデア、ご意見を「月刊ラブおたる」にお寄せ下さい。
 HPの URL: http://www.love-otaru.ecnet.jp/ まで、よろしくお願い致します

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

Dmama
2007年09月21日 16:58
やはり不倫の行く末って、女はこうなりますね!
2007年09月21日 18:38
実際には、渡辺淳一の小説のようには行きませんね!
Dreamyで幼い「男」と、現実を如何に生きるかに戻る逞しい「おんな」
こう書いてしまうと、語るに落ちる!Romanが無くなります。
「逢いたくて 小樽 ♪」も好評ですが、「カネ」の話になると腰が引けますねー! あー、あーって、感じ!
Dmama
2007年09月22日 00:00
私はこういう展開のほうが好きです。30年くらい前の渡辺淳一の小説は好きでした。得意の医学を織り交ぜ、単行本が出るのを待ちわびて読んでたのですが、だんだんエロチック路線になり、あまり読まなくなりました。
2007年09月22日 11:39
IE7(最新Internet Explorer)に切り替えてから「エラー」が多く、途中でCut消失とか、文字キーが効かなくなります。
今も、途中で「エラー」MessageでNetは消失。再起動です。
昔、北海道をテーマにした渡辺淳一ものは、私の真似る純真素朴な作風でした。Book-OFFの文庫本のかなりな部分を占めていますね。
先日、本棚を整理し、後生大事に撮ってあった書籍60冊ぐらいをBook-OFFに持っていきましたら古本的価値はいくらかあってもBook-Offでは取引不能で返されました。渡辺淳一の「阿寒に発つ」を100円で買って帰りました。
過去の名作も「燃えるごみ」で出すしかありません!
Dmama
2007年09月23日 08:09
無影灯が好きでした。わがままでニヒルな男に魅力を感じた若かりし日。今読んだらどうでしょうね?
2007年09月23日 09:16
♪凄い力作ですね・・・小樽・・・ロマンを感じる街ですな・・・(*^_^*)

この記事へのトラックバック